top of page

🧪 グループ|ペットの中毒ライブラリーー犬猫の中毒予防研究室ー

公開·49名のメンバー


以前VSJ様にて投稿させていただいていた記事を移行します。以前よりご登録いただいておりました方におかれましては重複の投稿となりますことご容赦ください。



【ディート】

■はじめに


フィラリアの駆虫薬を処方する検査を毎日行われている中で,飼い主様から市販の虫除け剤について聞かれることもあるかもしれません。本日は虫の忌避剤として用いられるディートの犬への安全性についてご紹介いたします。

■原因物質

ディート(deet),別名N,N-diethyl-m-toluamide, ジエチルトルアミド

ディート10 %製品を人腕に塗布し風で乾かした後,ネッタイシマカのいるケージに腕を入れて5分間の蚊の行動をみた実験では忌避効力持続時間は4.2時間であった。ペットに対する市販品も存在する。



■症状

1年間ディートをゼラチンカプセルに入れて30 mg/kg/day, 100 mg/kg/day, 400 mg/kg/dayで犬に投与した試験では,1頭の犬に

投与後30分以内に運動失調,異常な頭部運動,けいれんが投与期間中複数回みられ,ディートの高用量と関連していると考えられている。また,400 mg/kg/dayの投与を受けた複数の犬では体重の減少や,試験開始初期の食欲の低下もみられている。


また血液学的変化も認められている。400 mg/kg/dayの高用量を投与された犬ではヘモグロビンとヘマトクリットが6ヶ月と12ヶ月の時点でわずかに減少していた(雌雄双方)。ALPの増加も投与後6ヶ月,12ヶ月時点でみられた。コレステロール の低下(雌雄)やカリウムの上昇(雄)もみられたものの,実験に用いられた犬たちは高用量群も含め1年間の研究期間で死亡例はなかった。


また,実験ではなく中毒に関する報告ではディート単体のものは少なく,ピレスロイド系との合剤での中毒が報告されている。中毒による犬や猫の臨床徴候は軽度(食欲不振、嘔吐),中度(流涎低下、かすみ目,blurred vision),高度(発作、昏睡)となっている(注:この症状はディートとピレスロイド系薬剤双方の中毒症状であり単体のものではない)



■中毒量

実験より体調に影響を与えない無影響量NOELは犬では100 mg/kg/dayとされた。中毒の発生は稀であるため中毒量は不明である。

市販のサラテクト ペット用では100 ml中にディートが6.0 g含まれている。缶をあけ大量に誤飲するという可能性は低いと思われるが大量摂取で毒性があることは留意しておく。


ディート単体での記載は少ないが,ピレスロイド系殺虫剤との混合剤における中毒量は示されている。市販のフェンバレレート0.09%とジエチルトルアミド(DEET)9.0%を含むノミ・ダニ用スプレー製品の毒性量は, 犬で4 mg/kg、猫で2 mg/kgとされる。(なお,フェンバレレートの犬のNOELは12.5 mg/kgで猫はよりピレスロイド系に鋭敏であるとされる)


※90日間の投与実験ではフェンバレレートの犬のNOELは12.5mg/kg (WORLD HEALTH ORGANIZATION, et al. Fenvalerate-Environmental Health Criteria 95. 1990. https://stg-wedocs.unep.org/bitstream/handle/20.500.11822/29418/EHC95F.pdf?sequence=1&isAllowed=y)


■中毒を起こしやすい犬種

知られていない。噴霧した部位を舐めないようにする。少量舐めた程度では中毒を発言する可能性は低いと思われる。


■催吐処置の有効性について

不明(参考:ピレスロイド系の場合は誤飲後時間が経過していなければ催吐や活性炭が有効)


■治療

拮抗薬はなく対症療法が中心となると思われる。


■注意すべきこと

毒性実験は多数行われており,高用量(400 mg/kg)の長期間投与では死亡はみられなかったものの,摂取後30分以内に痙攣や運動失調を起こしたと報告もなされており,中毒を起こす可能性があるため使用が多くなる夏季には用法用量を守りペットの口に入れないようにする必要がある。


また中毒に関する量や治療なども報告が存在するが,ディート単体によるものではなくいずれもピレスロイド系との合剤で,論文中にも毒性はピレスロイド系によると記載があるためディート単体での中毒の程度については不明である。また,国内においてはディート単体の製品が多く現時点2023/04/10では動物医薬品等データベースでは副作用の報告はなされていない。


■参考


・動物用医薬品等データベース ディート https://www.vm.nval.go.jp/?name_product_name=&mfg_dealer_name=&ing_ingredient_name=ディート&medicine_mast_name=&submit=submit&generalname_mast_name=&approval_date_from_year=&approval_date_from_month=&approval_date_from_day=&approval_date_to_year=&approval_date_to_month=&approval_date_to_day=&apply_date_from_year=&apply_date_from_month=&apply_date_from_day=&apply_date_to_year=&apply_date_to_month=&apply_date_to_day=&approve_mast_name=&regulate_mast_name=&efficacy_quality=&using_dosage=&electivemfg_dealer_name=&origin_country= 2023/04/10参照


・SCHOENIG, Gerald P., et al. Evaluation of the chronic toxicity and oncogenicity of N, N-diethyl-m-toluamide (DEET). Toxicological sciences: an official journal of the Society of Toxicology, 1999, 47.1: 99-109.


・LORSIRIGOOL, Athip; SUDJAROEN, Yuttana; KULNIDES, Narong. Abuse of Chemical Substances Cause Poisoning in Dogs and Cats: A Review. Indian Journal of Forensic Medicine & Toxicology, 2022, 16.4: 137-143.


・ANADÓN, A.; MARTÍNEZ-LARRAÑAGA, M. R.; MARTÍNEZ, M. A. Use and abuse of pyrethrins and synthetic pyrethroids in veterinary medicine. The Veterinary Journal, 2009, 182.1: 7-20.(ピレスロイド治療について)


・イカリジン5.0g/100ml に係る医薬品医療機器総合機構における審査結果:pmda https://www.pmda.go.jp/quasi_drugs/2015/Q20150615002/400092000_22700DZX00374000_Q100_1.pdf 2023/04/11参照

グループについて

グループへようこそ!他のメンバーと交流したり、最新情報を入手したり、動画をシェアすることができます。

メンバー

  • Yurika Nakamura

    🎓 動物看護師コース履修

  • sakurai tomoiro

    👩‍🏫 麻酔学eClass Ⅰ

    👩‍🏫 神経学eClass Ⅰ

  • ふじた

    👩‍🏫 麻酔学eClass Ⅰ

    👩‍🏫 麻酔学eClass Ⅱ

  • KM

    👩‍🏫 麻酔学eClass Ⅰ

    🎓 獣医師 MASTER コース履修

  • info
bottom of page