【紛らわしい名前の有毒植物:カロライナジャスミン】
■概要
食用のモクセイ科のジャスミン(Jasminum属植物の総称、マツリカなど含む)と名前が似ているカロライナジャスミン(Gelsemium sempervirens)は、有毒なアルカロイドを含んでいる。人間では、モクセイ科のジャスミン(Jasminum属植物)と誤認してお茶にした例での中毒が発生しているほか、ヤギやガチョウの死亡例が報告されている。論文として報告されている犬や猫の中毒例はないが、日本では観賞用としてよく栽培されている園芸品種なので、お散歩中に接触しないようにさせる。一般的に花の色は黄色であり、花の蜜を含む全草に毒性がある。
花は4〜5月に見頃を迎える。カロライナジャスミンは庭木や生垣として植えられている。ジャスミン茶に用いるモクセイ科のジャスミンは東京近郊では屋外では生育せず、温室で栽培され、比較的稀な植物である。こちらの毒性のないジャスミン(マツリカ)の花の色は白である。
■原因物質
ゲルセミン、ゲルセミシン、ゲルセジン、センペルビリンなどのアルカロイド。これらは全草(植物の全ての部分)に含まれる。
■臨床徴候(症状)
けいれん、呼吸麻痺、嚥下困難など
■中毒量
不明
■治療
除染(催吐、胃洗浄、活性炭)のほか静脈輸液をはじめとした支持療法も重要となる。
■注意すべきこと
ジャスミン茶の香りづけに用いられるジャスミンの花には毒性はないとされるものの、緑茶の方にカフェイン(煎茶の含有量20mg/100ml)が含まれている。そのため、お茶や茶葉の誤食をしないように飼育環境の整備が必要となる。
■コラム
カロライナジャスミンという別名がありますが、ジャスミン茶の香づけに使われるジャスミンと間違えられて人での喫食中毒例があル。園芸植物でも有毒な種類はあるため、流通・販売する際は食べることのできる植物と似た名前を使わないことが重要となる。
名前がまぎらわしい有毒植物では、シキミ(Illicium anisatum)もあげられる。中華料理で用いられるトウシキミ(Illicium verum)、八角の実とシキミの実がよく似ているので誤食での中毒例が報告されている。
見た目が似ているものでは、スイセンの葉がニラの葉によく似ていることでの誤食も人間では報告がある。ニラもネギの仲間なのでどちらにしろ犬には有毒であるが、同定できない植物に動物が接触しないように注意をする必要がある。
■参考
・MOUNT, M. E. Nature's toxic beauties. 2004.
・小島 直樹 et al, シキミ中毒の 1 例, 中毒研究 31:410-412,2018
・Thompson LJ, Frazier K, Stiver S, Styer E. Multiple animal intoxications associated with Carolina jessamine (Gelsemium sempervirens) ingestions. Vet Hum Toxicol. 2002 Oct;44(5):272-3. PMID: 12361108.
・自然毒のリスクプロファイル:高等植物:カロライナジャスミン, https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000075812.html
・ジャスミンとカロライナジャスミン(有毒), 東京都健康安全研究センター, https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/lb_iyaku/plant/yudoku-top/jasuminn/
・農林水産省、カフェインの過剰摂取について, https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html