【育毛剤ミノキシジルによる犬と猫の中毒】
危険度★★★
余談:発毛剤として知られるミノキシジルは元々降圧剤として開発されました。のちに副作用である多毛作用が注目され、現在は発毛剤としての利用が主となっています。降圧剤ということで、過量摂取すると人でも中毒を起こします。自殺企図での症例報告も散見されます。
日本語資料を添付いたします。
・高橋哲也; 武居哲洋; 伊藤敏孝. 症例報告 ミノキシジル中毒の 1 例. The Japanese journal of clinical toxicology= 中毒研究: 日本中毒学会機関誌/日本中毒学会 編, 2014,
■概要
発毛剤として知られるミノキシジルは元々降圧剤として開発されました。のちに副作用である多毛作用が注目され、現在は発毛剤としての
利用が主となっています。
ミノキシジルは犬と猫双方に中毒を起こします。米国では2001年から2019年の間に犬で25件、猫で62件の中毒報告がありました。猫では特に感受性が高く、このうち8件の猫が死亡しています。
ミノキシジルは、脱毛症治療のために国際的に市販されている外用薬であり、特に誤って犬や猫が暴露されるケースが報告されています。本研究は、2001年から2019年までの期間における米国動物虐待防止協会(ASPCA)動物毒性管理センター(APCC)のデータベースから、外用ミノキシジル暴露による犬と猫の中毒症例の回顧的研究が報告されました。
■原因物質
外用ミノキシジル(Minoxidil)。強力な血管拡張剤であり、経口摂取では高血圧治療に使用されますが、外用でも全身に吸収されることがあります。
■臨床徴候(症状)
犬と猫の両方で、低血圧、頻脈、頻呼吸、食欲不振、嘔吐、無気力、神経学的変化、腎機能障害、電解質異常など多岐にわたる症状が発現しました。
■中毒量
具体的な中毒量は不明です。数滴舐める程度の暴露でも中毒を起こすことがあります。例えば、1滴のミノキシジルが猫にかかり、それを舐めただけで低血圧を引き起こすケースも報告されています。
■中毒を起こしやすい動物種・犬種
猫は犬よりもミノキシジルに対して敏感であり、重篤な症状を引き起こす可能性が高いです。これは猫がミノキシジルの代謝に必要なグルクロン酸抱合経路が欠乏しているためです。
■催吐
不明
■治療
解毒薬はありません。支持療法を中心に行われます。
■参考
- Tater KC, Gwaltney-Brant S, Wismer T. Topical Minoxidil Exposures and Toxicoses in Dogs and Cats: 211 Cases (2001-2019). J Am Anim Hosp Assoc. 2021 Sep 1;57(5):225-231. doi: 10.5326/JAAHA-MS-7154. PMID: 34370845.