【門松にも使われる縁起物!ナンテンの中毒】
■概要
ナンテン (Nandina domestica) はメギ科 (Berberidaceae)に属する多年生常緑低木である。主に中国、日本、インドに自生し、観賞用として栽培される。日本ではナンテンが「難を転じる縁起物」として愛され、果実は冬に美しく結実することから門松の彩として冬のホリデーシーズンによく販売されている。
特に果実にはシアン配糖体が高濃度に含まれ、摂取によりシアン化水素(HCN)が生成され、イヌネコや人、野鳥に中毒症状を引き起こす。
■原因物質
主な毒性成分はシアン配糖体(cyanogenic glycosides)であり、特に果実に高濃度で存在するが、他の部分にも存在する。
シアン配糖体は誤飲後、体内でシアン化水素(HCN)に変換される。シアン化物はミトコンドリアに作用する毒素であり、チトクロームオキシダーゼを含む多くの酵素を阻害し、細胞の恒常性を乱す。
嘔吐や呼吸困難、痙攣を起こす。また、毒性の詳細は不明なもののプロトベルベリンアルカロイド(protoberberine alkaloids)や、抗コリンエステラーぜ活性を持つベルベリン)berberine)も含まれている。
■臨床徴候(症状)
嘔吐、呼吸困難(呼吸不全)、暗赤色の粘膜 、発作(痙攣) 、頻脈、高血圧 、ショック 、体温上昇 などと。イタリアで症例報告があるが、イタリア語で記載されていたため詳細不明。
■中毒量
特定の中毒量に関する具体的な数値データは報告されていないが、果実には特にシアン配糖体が高濃度に含まれるため、少量の摂取でも中毒のリスクがある。
■中毒を起こしやすい動物種・犬種
ナンテンはイヌ、ネコ、その他動物にも中毒を起こす。2009年には、北アメリカに生息する野生のヒメレンジャク(Bombycilla cedrorum)の群れがナンテンを摂取して死亡したと考えられる報告がされている。
■催吐
不明だが消化の過程でシアン化水素に転じるため、早期の催吐による除染は有効と考えられる。
■治療
対症療法
■注意すべきこと
ナンテン (Nandina domestica) 中毒は5歳未満の幼児にも報告されており、臨床症状は主に消化器系の症状(例:吐き気、嘔吐、下痢)に限られることが多いと報告されていることから、イヌやネコの中毒もこれに準ずるものと思われる。
PS
エキゾチックアニマルについてはあまり診療経験もないので、省いてきましたが、ウサギなどについてのまとめも欲しいというリクエストもいただいたので、今後はウサギについても調べていきたいと思います。もし需要があれば、今回は詳細記載しませんでしたが野鳥の報告なども取りまとめていきたいと思いますのでご要望があればお教えいただければ幸いです。
■参考
・NAGY, Andras-Laszlo, et al. Emerging plant intoxications in domestic animals: A European perspective. Toxins, 2023, 15.7: 442.
・FORRESTER, M. B. Pediatric Nandina domestica ingestions reported to poison centers. Human & Experimental Toxicology, 2018, 37.4: 338-342.
・BERTERO, Alessia; FOSSATI, Paola; CALONI, Francesca. Indoor companion animal poisoning by plants in Europe. Frontiers in veterinary science, 2020, 7: 487.
・WOLDEMESKEL, Moges; STYER, Eloise L. Feeding behavior‐related toxicity due to Nandina domestica in cedar waxwings (Bombycilla cedrorum). Veterinary Medicine International, 2010, 2010.1: 818159.
・そうだ 京都、行こう。. 京都紅葉名所ガイド~見頃情報やおすすめスポット~ [インターネット]. [参照日: 2024年12月27日]. 利用可能: https://souda-kyoto.jp/blog/00312.html